【施工管理や現場監督は必見】建設業で派遣が禁止されている理由

【施工管理や現場監督は必見】建設業で派遣が禁止されている理由

  • 2024年8月15日
  • 2024年9月22日
  • 派遣

施工管理や現場監督は、派遣労働者として働く際や、派遣労働者へ指示を出す時、知らずに違法行為をとらないように注意が必要です。

なぜなら、労働者派遣法で建設業務は、禁止されているからです。

理由は、「労働災害の危険性を高める」「労働災害時に責任の所在が曖昧になる」「派遣労働者は、安定して雇用されることが難しい」からです。

よくある疑問例は、「派遣労働者として、施工管理をしているが、清掃が違法?」「そもそも建設業で派遣は、雇えないでしょ?」などです。

そこで本記事では、建設業で派遣が禁止されている理由と併せて、派遣の禁止業務や可能な業務施工管理の派遣禁止業務に違反した際の罰則、注意が必要な禁止事項やその経緯について解説します。

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建設業で派遣が禁止されている「理由」

建設業で派遣が禁止されている理由は、派遣労働者に不利なことが多いからです。

具体的な理由は、3つあります。

  1. 労働災害の危険性を高めるから
  2. 労働災害時に責任の所在が曖昧になるから
  3. 派遣労働者は、安定して雇用されることが難しいから

労働災害(労災)とは、働いている人(従業員、社員、アルバイトなど)が、仕事中にケガや病気、亡くなることです。

そのため、労働者派遣法の第一条では、派遣労働者を労働災害や雇用の安定性から保護するために、以下のように建設業での派遣の禁止を記載しています。

第一条 この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。

引用:e-Gov法令検索.「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」.第一条

この項目では、建設業で派遣が禁止されている理由について、さらに細かく解説します。

「労働災害の危険性を高めるから」

建設業で派遣が禁止されている理由の1つは、労働災害の危険性を高めるからです。

なぜなら、建設業界の構造が複雑で、作業員同士の行き違いや連絡ミスが、発生しやすいからです。

建設業界では、1つの建設プロジェクトに対し、多数の下請業者や孫請業者が関与する構造となります。

具体的には、元請から1次下請に委託し、さらに2次下請や3次下請へ委託していく構造を指します。(※「重層下請構造」と言われています)

このような複雑な構造だと、派遣労働者が誰の指揮命令下となるか曖昧になり、行き違いが発生しやすくなります。結果として、労働災害のリスクを高めます。

たとえば、派遣元から特定の作業手順を遵守するよう指示されていたものの、現場(派遣先)での作業手順が異なっていたため、作業の進行が混乱し、思わぬ事故や労働災害が発生する可能性が高まります。

したがって、労働災害の危険性やトラブルを防止するために、建設業の派遣は禁止されています。

「労働災害時に責任の所在が曖昧になるから」

建設業で派遣を認めると、労働災害時に責任の所在が曖昧になりやすいです。

万一、事故があった際に、派遣元(派遣労働者の雇用主や使用者)と派遣先(派遣労働者を指揮する事業者や企業)のどちらに責任があるのか不明確だからです。

原則として、派遣の労働契約では、派遣元に責任の所在があるとされています。

しかし、実態として作業をする場所は、建設現場であるため、ゼネコンや下請企業など派遣先の建設会社が責任を負う場合もあります。

建設業では、危険を伴う作業が含まれるため、責任の所在が明確にしておかないと、労働者の適切な保護が難しくなります。

たとえば、派遣元と派遣先の間で、責任の押し付け合いが発生することもあり、派遣労働者の保護が後回しにされかねないからです。

したがって、労働災害のリスクを回避し、労働者の安全を守るために、建設業における派遣は禁止されています。

「派遣労働者は、安定して雇用されることが困難だから」

派遣労働者は、一部の施工フェーズや人員の枠埋めなど短期契約されることが多いため、安定して雇用されることが困難になります。

建設プロジェクトの進行状況や季節によって、必要とされる労働力の需要が大きく変動するからです。

建設業は、基本的に受注生産であり、プロジェクトごとに必要な労働力が大きく変わります。

(「受注生産」とは、注文を受けた後に製品の生産を開始する生産方式を指します)

たとえば、基礎工事や内装工事など、特定のフェーズでの労働需要が一時的に高まり、そのフェーズが完成すると需要が急激に減少する場合があります。

そのため、派遣労働者は、常に仕事がある状態を保つことが難しく、雇用が不安定になりがちです。

そして、建設プロジェクトが終了すると、次の仕事がすぐに見つからず、収入が途絶えてしまうリスクが高まります。

建設業の派遣で「禁止の業務」「可能な業務」

建設業の派遣では、「禁止の業務」と「可能な業務」があります。

派遣の禁止業務については、労働者派遣法の第4条で規定されています。

万一、派遣労働者が禁止とされている建設業務を行うと、違法となり罰則の対象となります。

施工管理や現場監督を派遣労働者として仕事をされている方や、建設業で派遣労働者へ指示を出す機会のある方は、業務の範囲を把握し気を付けましょう

この項目では、建設業の派遣で「禁止の業務」と、その事例、「可能な業務」について解説します。

建設業の派遣で「禁止の業務」

建設業の派遣で「禁止の業務」は、労働者派遣法の第4条で規定されています。

また、第4条の2で建設業務が以下のように定義されています。

建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)

引用:e-Gov法令検索.「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」.第四条

簡単に言いますと、職人さんが建設現場で行うような作業その準備作業が、建設業の派遣で禁止されています。

派遣で禁止の建設業務

「建設業務」法律上の定義

  • 土木
  • 建築その他工作物建設
  • 改造
    (増改築など)
  • 保存
    (メンテナンスなど)
  • 修理
    (壁や天井の補修など)
  • 変更
    (外観の変更など)
  • 破壊若しくは解体の作業
    (構造物を取り壊す作業)
  • 上記の準備に係る作業

原則的に建設業務にあたる職種(一部の例)

大工:建築物の骨組みや内装を当する職人
鳶職:足場の組み立てや解体、高所作業を行う職人
左官:壁や床のモルタルの塗り付け、仕上げを行う職人
土工:土木工事における掘削、埋戻し、整地作業を行う職人
鉄筋工:鉄筋の組み立てや配筋を担当する職人
配管工:給排水設備やガス管の設置、メンテナンスを行う職人
電気工:電気配線や電気設備の設置、保守を行う職人
塗装工:建築物の外装や内装の塗装を行う職人
防水工:建築物の屋根や外壁の防水加工を担当する職人
解体工:建物や構造物の解体作業を行う職人

参考:国土交通省.「業種区分の点検と見直しについて」.(参考)現行28業種区分の内容(1/2)

建設業務にあたる「作業」の28事例

建設業務にあたる職種は前述しましたが、この項目では、派遣で禁止されている建設業務について、具体的な「作業」を事例で紹介します。

以下の事例の準備作業も、派遣で禁止される業務に含まれるので注意しましょう。

建設業務にあたる「作業」の28事例

土木」と「建築」両方の7事例
  1. コンクリートの合成や建材の加工
  2. 工事現場での準備作業全般
  3. 工事現場内での資材や機材の配送
    (現場外からの搬入は含みません)
  4. 工事現場内での配電や配管工事、機器の設置
  5. 工事後の現場の整理や清掃
    (内装仕上げ)
  6. 建築現場での重機の操作
    (クレーンや掘削機など)
  7. 高所作業
    (足場の設置や屋根の修理など)
土木」の4事例
  1. 工事現場での掘削
  2. 工事現場での埋め立て
  3. 工事現場での資材の運搬
  4. 工事現場での組み立て

土木の工事現場とは、道路や河川、橋、鉄道、港湾、空港などです。

建築その他工作物建設」の5事例
  1. 建築現場における資材の運搬
    (ビルや家屋など)
  2. 建築現場における組み立て
  3. 大型仮設テントや大型仮設舞台の設置
  4. 仮設住宅の組み立て
    (プレハブ住宅など)
  5. イベント設営における特定の作業
    (ステージの設置や撤去、音響機器や照明機器の設置)
改造」の2事例
改造とは、建造物の増改築などです。

  1. 建具類の壁や天井、床への固定
  2. 建具類の撤去
保存」の2事例
保存とは、メンテナンスなどを目的とした作業です。

  1. 壁や天井、床の塗装
  2. 壁や天井、床の補修
修理」の2事例
修理とは、壁や天井の補修などを目的とした作業です。

  1. 壁や天井、床の塗装
  2. 壁や天井、床の補修
変更」の4事例
変更とは、建築物の外観の変更などを目的とした作業です。

  1. 外壁への電飾版や看板の設置
  2. 外壁への電飾版や看板の撤去
  3. 建具類の壁や天井、床への固定
  4. 建具類の壁や天井、床への撤去
破壊若しくは解体の作業」の2事例
破壊若しくは解体の作業とは、構造物を取り壊す作業などです。

  1. 建造物や家屋の解体
  2. 建築現場での重機の操作
    (クレーンや掘削機など)

参考:一般社団法人 日本人材派遣協会.「建設業務」.禁止業務に該当する事例

建設業の派遣で「可能な業務」

建設業の派遣で可能な業務を紹介します。

  • 事務職員
    書面の作成や管理、顧客対応、データ入力などのオフィス業務を担当します。

    ・書面作成と管理:契約書、報告書、発注や請負契約に関連する書類などのファイリング
    ・電話、メール対応:顧客や常駐スタッフなどとの電話対応、担当部署への誘導など
    ・データ入力:スケジュール管理システムなどへデータ入力
  • ・CADオペレーター(主に平面図の作成)
    ・BIMオペレーター(主に建築工事における3Dモデルの作成)
    ・CIMオペレーター(主に土木工事における3Dモデルの作成)
    建築や土木工事などで、設計図の作成や修正、データの管理を行います。

    ・図面の作成と修正:設計図や施工図の作成および修正
    ・設計データの管理:ソフトを使用して作成された設計データの管理と保管
  • 施工管理
    建設工事において、品質や工程、安全などの管理を担当します。

    ・品質管理:品質検査の準備、報告書の作成、データの収集(建設材料の強度や耐久性の確保)など
    ・工程管理:施工管理技士の指示のもと、進捗状況の確認と報告など
    ・安全管理:安全点検の補助、現場での事故防止など

参考:一般社団法人 日本人材派遣協会.「建設業務

このように、建設業でも派遣が可能な業務は、存在します。

ただ、労働者派遣事業主(派遣元)は、厚生労働大臣に対して届出や許可申請をする必要があります。法律上の問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。

建設業でも「施工管理の派遣」は禁止されていない(合法)

建設業でも施工管理の派遣は、可能です。禁止されていないので合法となります。

ただ、派遣で禁止されている建設業務のように、職人さんが行うような現場作業はできません。

また、建設業法の趣旨を鑑みて、工事現場で専任配置が可能な監理技術者等(主任技術者や監理技術者、監理技術者補佐)を派遣労働者が行うことはできません。

国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルにも記載があるように、直接雇用が必要とされているからです。

建設工事の適正な施工を確保するため、監理技術者等は所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要である。

引用:国土交通省.「監理技術者制度運用マニュアルについて」.二-四 監理技術者等の雇用関係 .2024年3月26日

この項目では、施工管理の派遣が禁止されない理由と併せて、施工管理の派遣労働者目線で責任の所在や、現場でしてしまいそうな派遣の禁止業務について解説します。

施工管理の派遣が禁止されない「理由」

施工管理が禁止されない理由は、基本的に工事の建設作業を直接行わないからです。

施工管理の役割は、建設現場における工程管理、品質管理、安全管理、原価管理などの監督業務にあります。

建設工事の計画や作業順序の調整、監視することが主な業務となります。

そのため、事務員やCADオペレーターなどと同じように、禁止されている建設業務では適用除外とされています。

施工管理や現場監督の派遣社員が「ミスをしたら責任は誰にある?」

施工管理や現場監督の派遣社員がミスをした場合でも、一般的な派遣労働者と同様の考え方となります。

基本的には派遣元が派遣社員の責任を負いますが、ケースバイケースで派遣先派遣労働者本人責任を負う場合もあります。

  • 派遣元の責任

    派遣社員が派遣元や派遣先の指示通りに動こうとしてミスをした場合、基本的には派遣元が責任を負います。

    たとえば、派遣元が派遣社員に適切な研修や指導を行っていなかった場合などです。
  • 派遣先の責任

    派遣先の指示が原因で派遣社員がミスをし、それが問題となった場合は、派遣先が責任を負うケースがあります。

    たとえば、派遣先が派遣社員に対して不適切な指示を出したり、十分な情報を提供せずに業務を行わせたりした結果ミスが発生した場合などです。
  • 派遣労働者本人の責任

    派遣労働者は、派遣先の指示を聞かずに自分勝手に行動しミスを犯した場合、自らが責任を負う可能性があります。

    たとえば、施工管理の派遣社員が、派遣先の指示を聞かず安全規則を自己判断し、その結果として事故が発生した場合などです。

このように、施工管理や現場監督の派遣社員がミスをした場合の責任の所在は、状況により異なります。

したがって、施工管理や現場監督の派遣であっても、一般的な派遣労働者と同じ考え方となります。

施工管理の派遣が注意する禁止業務「清掃をしてはいけない?」

施工管理の派遣労働者は、建設中の建物内や資材置き場で、整理や片付けが認められていません。

空いた時間など、ついつい手が出そうな作業ですが、派遣で禁止されている建設業務に、直接従事されたものと扱われるからです。(参考:厚生労働省.「建設現場で必要な労働者派遣法の知識」.4.建設現場での労働者派遣)

たとえば、派遣労働者が誤って重い資材を運んでケガをした場合、責任の所在が曖昧になり問題が生じます。また、施工後に発生した残材を片付ける作業も派遣労働者の禁止業務に該当し、派遣労働者の職務として適用していません。

このように、施工管理の派遣労働者は現場での資材の掃除や片付けといった物理的な作業を行うことは禁止されており、管理業務に専念することが求められています。

一方で、仮設した事務所内での清掃は、建設作業と直接関係のない作業となるため、問題ないとされています。

したがって、施工管理の派遣労働者は、工事現場では物理的な作業を避け、管理業務に専念することが求められます。

ちょっとしたことで違法行為となり得るので、しっかり把握しましょう。

派遣の禁止業務を違反した際の「罰則」

労働派遣者本人や派遣元、派遣先は、建設業の派遣で違反した場合、罰金や懲役の罰則が科されます。

具体的には、労働者派遣法に違反した場合「100万円以下の罰金」または「1年以下の懲役」が科せられます。(参考:e-Gov法令検索.「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」.第五十九条)

違法な派遣が行われた場合に適用され、企業の法令遵守の重要性が強調されます。

労働者派遣事業主(派遣会社)が違反した場合は、さらに行政処分労働者への補償が必要となります。

  • 行政処分

    厚生労働省は、違法な派遣労働を行った企業に対して行政処分を下す権限を持っています。一定期間の派遣事業の停止や営業許可の取り消しなど。

  • 労働者への補償

    違法な派遣労働が行われた場合、企業は労働者に対して補償を行う義務があります。たとえば、未払いの賃金や労災補償など。

以上のように、建設業において違法な派遣労働が行われた場合の罰則は厳しくされています。

派遣で注意が必要な禁止事項

派遣労働者として働く際や、派遣労働者を雇用する際は、知らずに違法行為をしないように法規制を理解しておくことが大切です。

そこで、派遣で注意が必要な禁止事項について解説します。

安心して業務ができるように、何が違法となるのか、よければ参考にしてください。

二重派遣

二重派遣とは、派遣労働者を派遣先が、さらに別の会社へ派遣することです。

派遣労働者の雇用条件や労働環境を不安定にする恐れがあるので、法律で禁止されています。

二重派遣の禁止
二重派遣の禁止

たとえば、企業Aが派遣元であり、派遣先の企業Bがさらに企業Cへ派遣するようなケースが該当します。

二重派遣は、職業安定法(第44条)や、労働基準法(第6条)で規定されています。

参考:e-Gov法令検索.「職業安定法」.第四十四条
参考:e-Gov法令検索.「労働基準法」.第六条

日雇派遣

日雇派遣とは、1日単位や短期間(30日以内)で、派遣労働者を雇用する形態のことです。

短期的な労働力を必要とする企業にとって便利でしたが、雇用が安定しないので労働者派遣法(第35条の4)で原則禁止されています。(参考:e-Gov法令検索.「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」.第三十五条の四)

過去には、「派遣切り」や「年越し派遣村」などが社会問題となり、2012年10月1日に労働者派遣法が改正されました。

なお、日雇派遣禁止には、例外があります。以下をご参照ください。

日雇派遣禁止の例外

  • 60歳以上の労働者
    高齢者の働く機会を確保できるからです。
  • 雇用保険を受けない学生(昼間学生)
    学業を優先しながら一時的に働きたい学生のニーズに応えられるからです。
  • 生業収入が500万円以上の者
    主な収入源が安定していると認められるからです。
    また、生業収入とは、複数の収入源がある際、最も大きな収入源のことを指します。
  • 世帯収入が500万円以上の主な生計者以外の者
    世帯としての収入は、最低限確保できているからです。

参考:厚生労働省.「クローズアップ 知っておきたい改正労働者派遣法のポイント

元従業員の派遣(離職してから1年以内)

元従業員を離職後1年以内に、再び同じ企業に派遣することは、禁止されています。

企業が派遣制度を悪用し、コスト削減などを目的とした再雇用を防止するための措置です。

たとえば、企業が正社員としての雇用を解除し、その後すぐに派遣社員として再雇用することで、低コストに抑えられる場合があるからです。

したがって、労働者派遣法(第40条の9)で禁止されています。

労働者の権利を保護し、健全な労働環境を維持するための重要な手段として導入されています。

参考:e-Gov法令検索.「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」.第四十条の九

派遣スタッフを特定する行為

特定する行為とは、企業が特定の派遣スタッフを選別して、派遣会社(紹介予定派遣は含みません)へその個人を要求することです。

派遣で禁止される理由は、派遣を求める企業と派遣労働者の間に雇用関係がないため、そもそもの前提として企業が派遣労働者を選別する権限がないからです。

また、特定の労働者に過度に依存すると、他の派遣労働者に不利な影響を与え、労働環境の公平性を損なう恐れもあります。

そのため、労働者派遣法の第26条6項で禁止されています。

参考:e-Gov法令検索.「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」.第二十六条

3年ルール(3年を超えた派遣受け入れ)

3年ルールとは、同じ派遣労働者に対し、3年を超えて受け入れることができないという意味です。

そのため、派遣労働者は、3年を超えて同じ職場で働くことはできません。

派遣労働者が長期間にわたって派遣先で働くことは、事実上の常用雇用に近づき、派遣労働の目的や趣旨から逸脱するからです。

また、3年ルールには、例外事項があります。

「3年ルール」の例外

  • 派遣会社と無期雇用契約を結ぶ派遣労働者
    (常用型派遣や正社員型派遣と呼ばれます)
  • 60歳以上の派遣労働者
  • 有期プロジェクトに従事する派遣労働者
    (雇用契約時に、プロジェクトの終了時期が決定されている場合)
  • 日数が限定されている業務に従事する派遣労働者
    (正規雇用者と比べて、1ヵ月の労働日数が少ないと認められる場合)
  • 育児休業、介護休業、産前産後休業などを取得する派遣労働者

参考:厚生労働省.「派遣労働者の受入れ」.派遣社員を受け入れるときの主なポイント

建設業の派遣はいつから禁止となった?|労働者派遣法

建設業の派遣は、1986年に労働者派遣法が施行され、最初から禁止されていました。

派遣労働者の安全性や責任の明確化、雇用の安定化を確保するためです。

労働者派遣法により、特定の業務について派遣労働者の使用が禁止され、その中に建設業務も含まれています。

この項目では、労働者派遣法の業務の禁止や解禁を中心に、全体の経緯を紹介します。

もし、興味があれば、是非ご参照ください。

「過去」禁止された業務と解禁された業務の経緯|労働者派遣法

労働者派遣法は、1985年に成立し、1986年に施行されました。

労働者派遣法が施行された経緯

労働者派遣法が施工される以前は、派遣が業務請負として類似する形態とされていましたが、労働災害の危険性や雇用責任の曖昧さ、雇用の安定性が問題となりました。

これらのデメリットを解決し、労働者を保護するために労働者派遣法が1986年に施行されました。

正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。

一般的には「労働者派遣法」や「派遣法」と呼ばれています。

この項目では、労働者派遣法が施行されてから、派遣が禁止された業務と解禁された業務の経緯について解説します。

はじめに、大まかな流れを紹介します。

大まかな労働者派遣法の業務の禁止と解禁の流れ

  • 1986年(昭和61年)
    労働者派遣法を施行。当初、専門的な16業務のみ派遣が可能となる。
  • 1996年(平成8年)
    専門的な業務が新たに10業務解禁され、合計26業務となる。
  • 1999年(平成11年)
    禁止業務の6業務を設け、専門26業務(政令業務)自由化業務に分けられる。
  • 2004年(平成16年)
    禁止業務の1業務(製造業)が解禁され、禁止業務が5業務へと緩和される。
  • 2015年(平成27年)
    専門26業務と自由化業務が撤廃され、禁止業務が5業務以外は原則自由化となる。
  • 現在
    禁止業務が5業務となり、それ以外は原則派遣が可能。

続いて、年ごとに具体的に解説します。

労働派遣法で「禁止された業務」と「解禁された業務」の経緯

1986年

労働者派遣法が施行されたことで、専門的な業務に限り、許可制で労働者派遣事業が可能となりました。

施行直後、13業務から16業務へ追加し、それら以外の派遣は禁止でした。

派遣で専門的な16業務

初回の13業務:専門業務(1~9)

1.ソフトウェア開発
2.事務用機器操作
3.通訳、翻訳、速記
4.秘書
5.ファイリング
6.調査
7.財務処理
8.取引文書作成
9.デモンストレーション

初回の13業務:専門業務(10~13)

10.添乗
11.受付・案内、駐車場管理など
12.建築物清掃
13.建築設備運転、点検、整備

追加の3業務:専門業務(14~16)

14.機械設計関係
15.放送機器など操作
16.放送番組など演出

1996年

派遣で専門業務が10業務解禁され、全部で26業務となりました。

1990年代初頭のバブル経済崩壊後、日本経済は低成長期に入り、柔軟な労働力の確保が求められるようになったからです。

追加された専門的な10業務

追加の10業務:専門業務(17~21)

17.研究開発
18.事業の実施体制などの企画・立案
19.書籍などの制作・編集
20.広告デザイン
21.インテリアコーディネーター

追加の10業務:専門業務(22~26)

22.アナウンサー
23.OAインストラクション
24.テレマーケティングの営業
25.セールスエンジニアリングの営業
26.放送番組などにおける大道具・小道具スタッフ

1999年

派遣可能な業務が原則自由化され、ポジティブリストからネガティブリストという方法へ変更しました。

そのため、今まで派遣が可能な業務を労働者派遣法へ明記していましたが、派遣の禁止業務が明記されます。

派遣で禁止された6業務

1.港湾運送業務
2.建設業務
3.警備業務
4.病院・診療所などにおける医療関連業務
5.製造業務
6.弁護士や管理建築士など、いわゆる士業
(各法令の趣旨に反するため)

したがって、専門26業務自由化業務禁止業務の3つが使い分けられるようになりました。

派遣期間など細かい規定が異なっています。

2002年

専門26業務の「25.セールスエンジニアリングの営業」へ同じ枠として、「金融商品の営業」を追加。

2004年

禁止業務であった、製造業務への派遣が解禁

そのため、派遣で禁止されていた6業務は、5業務へと緩和されました。

2006年

禁止業務の医療関連業務で一部の業務が解禁されました。

(産前産後休業や育児休業、介護休業中の労働者の業務、僻地での業務など)

2015年

専門26業務と自由化業務の区別が撤廃

そのため、禁止業務以外は、原則同じ条件(派遣期間など)で派遣が可能となります。

参考:厚生労働省.「第1回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」.2008年2月14日.労働者派遣制度の現状等に関する資料

「現在」禁止されている業務|労働者派遣法(2024年8月時点)

現在、労働者派遣法で原則として禁止されている業務は、5業務あります。内容は以下となります。

「現在」派遣で禁止されている5業務

1.港湾運送業務
2.建設業務
3.警備業務
4.病院・診療所などにおける医療関連業務

病院・診療所などにおける医療関連業務の職種(例)

・医師
・歯科医師
・薬剤師
・看護師、准看護師
・保健師

・助産師
・栄養士
・診療放射線技師
・歯科衛生士
・歯科技工士

※一部の社会福祉施設など、業務が行われる施設や場所により、派遣が可能な場合があります。

5.弁護士や管理建築士など、いわゆる士業
(各法令の趣旨に反するため)

弁護士や管理建築士など、いわゆる士業の職種(例)

・弁護士
・外国法事務弁護士
・司法書士
・土地家屋調査士
・公認会計士

・税理士
・弁理士
・社会保険労務士
・行政書士
・管理建築士

※一部の社会福祉施設など、業務が行われる施設や場所により、派遣が可能な場合があります。

参考:厚生労働省.「労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・

まとめ:【施工管理の現場で必要な知識】
建設業で派遣が禁止されている理由

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

改めてまとめますと、建設業で派遣が禁止されている理由は、3つです。

・「労働災害の危険性を高めるから」
・「労働災害時に責任の所在が曖昧になるから」
・「派遣労働者は、安定して雇用されることが難しいから」

1986年に施行された労働者派遣法により、はじめから建設業務は禁止されており、違反した際は罰則があります。

施工管理や建設業での事務職、CADオペレーターなどは派遣が可能です。

派遣労働者が現場で清掃などの作業を行うことも、労働者派遣法に違反する可能性があるため、注意が必要です。

建設業で働く際には、労働者派遣法を理解し、法令を遵守することが大切です。


建設業や施工管理の転職を視野に入れている方へ|SEKO38

●次の仕事が決まる前に、現在の退職をするのは避けましょう。

やむを得ない事情を除いて、先に退職し経歴が途切れてしまうのは、あまり良くありません。

退職理由や空白期間の活動内容を明確に説明できれば問題ありませんが、それらを面接で上手く伝えられないと印象を悪くしてしまう可能性があるからです。

また、転職活動をする際は、現在の会社を退職する前に募集されている求人の採用情報をチェックしましょう。

「先に知っておけば良かった」を回避できるからです。

たとえば、どのくらいの企業が有資格者(たとえば、施工管理技士や建築士など)を必須としているか、求めている年齢層はどのくらいか、女性でも働きやすそうな職場環境があるかなど。

目安であっても、実態を先に知ることが大切です。

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転職エージェントの利用をおすすめします。

転職エージェントでは、求人に応募する前にTEL面談など、面接対策ノウハウや希望する仕事内容などについて気軽に質問ができますし、転職サイトより求人数が多い傾向があります。

また、「派遣しか選択肢がないのか」「年齢的に厳しくなるのか」「給料の相場は実際どのくらいか」などの疑問を建設業の実績や実務経験、資格を持つアドバイザーへ相談できるメリットがあります。

基本的に無料で登録できるので、興味のある方は早めの活用が有効です。

●求人情報を見る時の注意

求人情報を見る時は、派遣や契約社員を正社員と誤解してしまうことがあるので注意が必要です。

※とくに正社員型派遣です。総合的な大手転職サイトでも、就業形態がわかり辛い場合があります。

また、年間休日や給与、勤務時間、残業手当などの待遇面だけでなく、併せて企業の教育研修や支援制度(資格取得など)も確認しましょう。

企業によっては、オンライン講座に参加し、入社後に研修の一環とする職場環境もあります。

SEKO38では、転職エージェントと転職サイトに分けて、各社を比較し厳選しています。

是非、参考にしてください。

▼転職エージェント
迷わず選択できるように、3つの観点で建設業界での転職に適している転職エージェントを厳選。
施工管理・建設で即決断の転職エージェントはこの3つ|17サービス以上を比較!|SEKO38

▼転職サイト
属性や転職意向(派遣で仕事「避けたい」、「気にしない」など)に合わせて、おすすめの転職サイトを厳選。
施工管理・建設の転職サイトを意向別におすすめ|21サービス以上を検証比較|SEKO38


施工王の記事|外部サイトの紹介

以下のサイトでは、施工管理派遣のメリットも紹介しています。

気になる方は、こちらもご参照ください。

施工管理派遣の本当のメリットを解説!ゼネコン正社員と比較|施工王