施工管理の忙しい時期は、シーズナリティという観点では「9月と12月から翌年の3月」、工事の進行状況という観点では「工事開始前と工事完了前」です。
とはいえ、どういう理由でどの程度忙しいのかイメージできませんよね。
そこで本記事では、主にシーズナリティと工事の進行状況という観点で、忙しくなる理由を解説します。また、ヒューマンエラーによる忙しさや、忙しい時期を乗り切る方法、転職に適した時期についても併せて紹介します。
是非、参考にしてください。
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施工管理の忙しい時期とその理由
施工管理の忙しい時期は、シーズナリティという観点で言えば、9月と12月から翌年の3月です。「公共工事の増加」や「決算期と新年度の影響」、「長期休暇の影響」が主な理由となります。では、この時期に工事現場の施工管理が忙しくなる背景について、さらに詳しく見ていきましょう。
●公共工事の増加
予算の配分や政策的な判断により、国や地方自治体からの公共工事が集中する傾向にあります。特に8月~11月にかけて、年末に向けた工事が増加し、施工管理者は計画と調整に忙しくなります。
・3月:予算を確定します。
・4月~7月:公共工事の依頼が徐々に増え、7月が特に活発的となります。
・8月~11月:年末に向かって稼働する工事が増え、忙しさが増していきます。
・12月:予算消化による公共工事の追加依頼や、稼働中の工事によりピークを向かえます。
・翌年の1月~3月:3月末に向かって工事を完了させるケースが多いです。
●決算期と新年度の影響
多くの企業や自治体が年度末の3月に決算を迎えるため、先立ってプロジェクトを完了させたいというプレッシャーが働きます。また、新年度の始まりとともに新しいプロジェクト案件が始動するため、準備作業も重なります。
●長期休暇の影響
学校やオフィスビルなど長期休暇でなければ工事をしづらく、長期休暇の前後で工事スケジュールが集中します。特に年末年始やゴールデンウィーク前後は、工事の進行や完成を急ぐ動きが顕著になります。例としては、学校の夏休みを利用した校舎の大規模な改修工事などです。
そのため、シーズナリティという観点において、建設業における施工管理の忙しい時期は、9月と12月から翌年の3月と言えます。施工管理の忙しい時期に対応するためには、リソースの適切な配分と労働力の確保を計画的に行い、工期内に完了させることが成功につながります。
建設業の労働時間や出勤日数の実態は?
建設業の労働時間や出勤日数が、全産業と比べてどう違うのか、統計を見て実態を把握しましょう。国土交通省により公表された、2023年12月22日の第5回検討会(「参考資料2 建設業(技術者制度)をとりまく現状」)の資料によると、建設業界の労働時間は他の多くの産業と比較して長く、出勤日数も多いことが明らかにされています。
●年間の出勤日数:全産業と比べて建設業は、12日多い。
●年間の総実労働時間:全産業と比べて建設業は、68時間長い。
※総実労働時間とは、所定労働時間に所定外労働時間を含めたものです。
出典:国土交通省.「適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)」
全産業と比べて建設業は、年間出勤日数について、1ヵ月あたり1日多いことがわかります。また、総実労働時間は、全産業と比べて建設業が、1ヵ月あたり5.7時間多いことがわかりました。
施工管理の閑散期とその理由
施工管理における閑散期は、一般的に4月から6月です。主に「予算編成が未定」「計画段階の途中」が影響しています。多くの施工管理技士や現場監督は、比較的に落ち着いた運用となります。詳細内容を以下に紹介します。
●予算編成が未定
地方自治体や大手企業などの予算編成が未定で、建設工事が動きはじめの状態が多いためです。予算編成が遅れると、工事の発注自体が遅れる原因となり、施工管理の仕事内容が一時的に減少します。
●計画段階の途中
すでに承認されたプロジェクト案件であっても、計画の詳細を詰める作業が中心となります。実際の建設作業が開始される前の準備段階と言えるため、現場の活動は限られています。
したがって、施工管理における閑散期は、4月から6月と言えます。施工管理の閑散期を理解し活用することは、労働環境の改善や業務効率の向上を望めます。この時期を有効に使い、繁忙期に備える準備を整えることが大切な戦略となります。
施工管理の業務がヒマな時とその理由
施工管理の業務がヒマな時は、比較的に雨の日と言えるでしょう。工事現場が雨にさらされる環境ですと、現場での作業が危険となり、工事を中止にする必要があるためです。日本では、5月から9月にかけて雨が多くなることが予想されます。結果的に施工現場の活動が限られるため、施工管理者にとってはヒマな時となりがちです。
具体的には、雨の日は工事現場が滑りやすく、視界が悪くなるなど作業中の安全リスクが高まります。施工管理者は作業員の安全を最優先に考えるため、雨の強い日には作業を中止または制限せざるを得ません。また、雨による地面のぬかるみや材料が濡れることは、作業の効率を大幅に下げます。特に土木工事や基礎工事では、地盤が水を含むと作業が困難になるため、計画された工程が順守できなくなります。
したがって、雨の日は危険なので現場工事が中止され、業務が軽減されます。結果として施工管理の業務が、ヒマな時と言えます。
なお、雨天時に行える室内作業や事務作業にシフトすることで、時間を有効活用することが可能です。
●計画と報告の更新:工事計画の修正、請求書の作成、図面のチェックや修正など
●関係者との情報共有: 関係者との打ち合わせを行い、次の工程の準備など
施工管理への転職におすすめの時期
施工管理への転職におすすめの時期は、シーズナリティという観点で、未経験者が4月~6月、経験者が3月と9月です。理由をそれぞれ解説します。
●未経験者が「4月~6月」の理由
建設業の閑散期と重なるためです。新人教育に充てる時間が確保しやすい傾向にあるため、比較的に基礎から学ぶのに適した時期と言えます。また、多くの企業が新年度の動きを安定させつつある時期で、未経験者を受け入れる余裕が生まれやすいです。
●経験者が「3月と9月」の理由
一般的に求人が増える時期のためです。多くの企業が新年度の準備や下半期の計画を始めるタイミングとなるため、プロジェクトの計画が動き出します。そのため、新しい体制の構築や既存プロジェクトの再編に向けた人材が必要とされる傾向があります。
したがって、あくまでシーズナリティという観点ですが、未経験者は「4月~6月」、経験者は「3月と9月」が施工管理への転職に最適な時期と言えます。シーズナリティを理解し活用すると、施工管理への転職も戦略的に行うことが可能です。
施工管理の工事の進行状況による忙しい時期
施工管理は、工事の進行状況に応じて忙しい時期があります。この項目では、工事が開始される時期と完了する前の忙しさについて解説します。また、建設現場でのヒューマンエラーが原因で忙しくなる例についても併せて紹介します。
工事が開始される時期「乗り込み時」
建設工事が開始される時期「乗り込み時」は、施工管理者が忙しくなります。工事の計画や事前準備をする必要があるためです。正確に計画を進めないと、後の工程に大きく影響します。
●国への申請業務
各種法規と規制に準じた承認を得るために適切な申請が必要です。
●原価計算
プロジェクトの財務的な実行可能性を確認するため、詳細な原価計算が行われます。
●資材手配
予定通りに資材を現場に配送することで、工程遅延を防ぎます。
●図面作成と打ち合わせ
実施設計図を作成し、関係者へ共有します。全員が計画を理解し、同意するための打ち合わせが行われます。
●工程表と施工計画書の作成
工事の全体的な流れとスケジュールを明確にし、関連するすべての作業者が確認できるように共有します。
たとえば、必要な許可を得るための文書を準備し、役所への提出をします。また、発注元や下請け企業、近隣住民との良好な人間関係を築くために、コミュニケーションを図ります。
したがって、建設工事が開始される時期は、忙しくなります。施工管理者が多くの業務を同時に進行させる必要があるため、計画的なアプローチが求められます。
工事が完了する前の時期「竣工前(しゅんこうまえ)」
工事が完了する前の時期「竣工前」は、重要な手続きが集中するため、施工管理者は忙しくなります。すべてが計画通りに進んでいるかの最終確認が行われるためです。プロジェクトの完了に向けて最も重要な段階です。
●大量の書類作成
工事の各段階で蓄積された情報をまとめ、正式な書類として整理します。変更管理記録や工事日報、検査記録などが含まれます。また、プロジェクトの進行状況や達成された成果について、クライアントへ報告するための文書を作成します。
●国への検査書類提出
法的規制や建築基準を遵守していることを証明するために、国や地方自治体へ関連検査の結果とともに書類を提出します。
書類例
・完了検査申請書:建物の安全基準、電気設備、消防設備の検査結果を詳述。
・環境影響評価書:建設活動が環境に与えた影響とその緩和策についての報告。
●規模が大きいプロジェクトの検査
大規模なプロジェクトほど、役所や発注者からの検査(安全性や品質、環境規準など)が多くなります。
施工管理者にとって竣工前は、プロジェクトを成功裏に締めくくるための最終試験のようなものです。精度と効率がタイムリーな完成を左右するため、施工管理者は、忙しくなります。
建設現場でのヒューマンエラーが原因で忙しくなる例
建設現場では、予期せぬトラブルやプレッシャーが原因となり、施工管理者が忙しくなる場合があります。では、どのようなケースか紹介します。
●資材の未着や不足、人員不足、設計ミスなどが原因で工事が遅延する。たとえば、新しいオフィスビルの建設で、耐震設計にミスが発見され、急遽設計の見直しが必要になるなど。
●複数の現場を同時に管理する。特に小規模から中規模の建設会社では、一人の施工管理者が複数のプロジェクトを同時に担当することがあります。たとえば、複数の現場で、同時にトラブル対応が必要な場合など。
●繁忙期には、連休が取りにくくなるなど、チーム内のストレスが高まることがあります。
したがって、時としてトラブルやプレッシャーが原因となり、施工管理者が忙しくなります。施工管理の現場業務は、効果的な事前準備とチームワークが、乗り越えるための鍵となります。
施工管理|平常時と忙しい時期のスケジュールの違い
「平常時」と「忙しい時期」では、施工管理者の事務作業の量に大きな違いがあります。
施工管理者の1日のスケジュールは、朝に現場の職人さんとラジオ体操や打ち合わせをし、日中は主に現場チェックと事務作業で、建設現場と事務所を行き来します。夜に現場チェックを行い、報告書や日報を提出します。そして、退勤という流れです。
「平常時」は、現場作業が完了する頃には、事務作業を終えられるように行動し、退勤します。しかし、「忙しい時期」は、施工管理者の事務作業が大幅に増えます。たとえば、施工計画書や工程管理表、予算管理表などです。そのため、朝は朝礼に顔を出せず、現場作業が完了していても事務所で残業をすることがあります。施工管理の1日の流れについては、以下の記事のタイムラインを見てイメージしてみてください。
施工管理の基本的な一日の流れは、「朝礼」で段取りの確認や情報共有をし、工事のはじまりから終わりまでは、「巡回」と「打ち合わせ」が中心となります。その後、現場の「作業終了や施錠の確認」し、「事務作業」をして退勤する流れとなります。なお、大抵は[…]
施工管理者が忙しい時期を乗り越える方法
施工管理者が忙しい時期を乗り越える方法は、建設工事の計画の質です。明確な計画によって、各タスクの優先順位が設定され、リソースが適切に配分されるからです。期限内に品質を維持しながらプロジェクトを完了することが可能となります。たとえば、 大規模な商業施設建設プロジェクトでは、プロジェクトマネージャーが開発計画を事前に細かく作成し、各段階でのリソース需給を調整します。そうすることで、予定通りに工事が進行する可能性が高められます。
建設工事の計画をしっかりと立て、適切な働き方を実現することは、持続可能なパフォーマンスを維持するための鍵となります。忙しい時期でも適切な働き方をすることで、効率的に業務を進めることが可能だからです。したがって、忙しい時期を乗り越える方法は、建設工事の計画の質と言えるでしょう。
建設業での働き方改革
建設業では、少しずつ働き方改革が取り組まれてきています。労働時間の適正化と柔軟な働き方の導入によって、疲労の蓄積を防ぎ、モチベーションの維持が可能になるからです。
具体的な4つの取り組み内容
- 時間外労働の上限規制(月45時間)
- 週休2日制の導入
- ICTの活用(スマホやタブレットを使用して、施工計画書や工程表などを管理)
- テレワークの導入
●ゼネコン会社で、週40時間の勤務時間上限を設け、残業が必要な場合は事前の申請を必須とした。そして、月平均の残業時間が20時間から10時間に削減されました。
●とある建設会社で、フレックスタイム制を導入し、家庭と仕事の両立を支援。また、クラウドベースのプロジェクト管理ツールを利用し、現場とオフィス間のリアルタイムな情報共有を実現。
「労働時間の改善は不可能だ!」という不満の声もあり、働き方改革が浸透していない企業があるかもしれません。ただ、建設業全体が前向きに動き出していることも事実です。したがって、何かと忙しそうな建設業における施工管理ですが、少しずつ変わりはじめていると言えるでしょう。
まとめ:施工管理の忙しい時期はいつ?季節や工事の進行状況から解説!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
施工管理の忙しい時期について、シーズナリティという観点では「9月と12月から翌年の3月」、工事進行という観点では「工事開始前と工事完了前」と言えます。施工管理者は、忙しい時期を乗り越えるために、事前のリスク管理計画を立て、資源の配分を最適化する必要があります。また、デジタルツールやICTの活用によるプロジェクトの効率化が鍵となります。
なお、”セコカン”とも呼ばれる施工管理者は、責任がのしかかり、非常に大変な職種です。しかし、激務であると同時に、やりがいや魅力もある仕事です。
転職を考えている方は、給与や年収、休日などの募集要項と併せて、職場で勉強でき、自身が成長できる環境であるかどうかも確認しましょう。また、現在の会社を退職する前に求人情報の応募条件(資格取得や能力)もチェックしましょう。